□ テイルズ オブ シンフォニア □


 どこかに懐かしい記憶がある
 自分の中に染み付いて消えない記憶がある

 その手の記憶を・・・・・
 今もまだ


 

 

 

 

 

 

   壊れた時計   .

 

 

 

 

 

 

「ロイドーっ、ロイド起きてっ朝だよーっ」
「・・・・・・ZZZZ」
「もうっ、朝ごはん無くなっちゃっても知らないからねっ」



 そう言ってコレットは手にしたお玉を振り上げて力無く降ろすと、他の仲間達を起しに 行ってしまった。
 先日の戦闘の疲れが残っているのかこの日のロイドはやけに寝起きが悪い。
 日も随分上がってきたというのに、木の下を陣取って朝日にも一向に目を覚ます気配が ない。
 目元を擦って、無意識にロイドは毛布を引き寄せ頭から被った。

 穏やかな風が通り過ぎる。

 数秒の後、誰も気付かぬ背後の木陰から人影がいくらか躊躇するように現れた。
 紫暗を基調とした着衣、赤銅の髪、ロイドを見下ろすその視線は鋭さの中にも温かみ が混じる。



「・・・・・朝寝坊にも、程があるぞロイド」



 クラトスは毛布を握り締めうつ伏せに眠りこける息子を見下ろして、低く呟いた。
 その気配にも彼の息子は起きる気配が無い。 余程疲れているのか、はたまた寝汚いの か。 安堵すると共にいくらかの淋しさが胸を掠める。
 面と向かって会えば敵対せざるを得ない現状を理解しつつも、眠り続ける息子の傍らに 膝を突いた。
 我が子の眠り顔などゆっくりと眺めたのは一体いつ振りだろうか。



「ロイドっ・・・・・」



 風が攫うのを引き止めるように、その手が毛布から見える我が子の額に掛かった髪を 流す。
 くすぐったいのか身じろぐ、その仕種が遠い日に見た幼子の面影に重なって、我れ知ら ず笑みを浮かべていた。
 愛する者とこの血を分かち持ったその身を、その存在を愛しく思う。



「もう、抱き上げるのも難儀するほど・・・・大きくなったのか・・・・」




 大きくなればいいと思う
 この手に抱けぬほど
 この目が知らぬウチにでも


 大きく育てばいいと思う


 この世界を包むほど
 大きく
 大きく
 その身を力強く


 育ってくれれば・・・・・・・いいと思う




「起きろロイド・・・・・お前の仲間が待っているぞ」




 ゆっくり目元にかぶさった毛布を避ける。
 日差しが直接息子の目を照らさぬようその身で影を作る。




「もう腹も減っているのだろう? さぁ、起きるんだ・・・・」




 そっと、壊れ物のようにその髪を梳く。
 触れる事に慣れていない無骨な手は、大切なものを壊してしまいそうで
 いまだぬぐえぬ記憶が脳裏で叫び声を上げる。




「・・っ・・・・んん〜・・・・・」




 意識が戻り始めたらしく、ロイドはうつ伏せていた体を横に寝返る。
 こうしていられるのも暫しの事と自分に言い聞かせ、誰知らず咎められぬ親子の会話が 流れていく。




「食べ損ねてもいいのか、今日は神子の手料理だぞ?」




 鍛えこまれた戦士の手が、まだ幼さを残したあどけない頬を撫でる。
 これが最後とその手が離れた時、まだ眠りの淵を行ったり来たりしているロイドの口 から言葉がこぼれた。






「・・・・と・・う・・・・さん・・・・・・」






 立ち去ろうとしていたクラトスの動きが止まる。


 微かな
 風の音に攫われてもおかしくないほど小さな声が


 その胸に大きく響き 喜びの音を上げる。









「・・・・・・・・強くなれ・・・ロイド」









 立ち去った父の姿を、息子が見ることは無かった。











 ・

 ・

 ・


「ロイドーーー! ロイドっもう起きて、ご飯冷めちゃう・・・・・・って、起きてたの?」



 あまりに遅いのを心配してもう一度起しにきたコレットが、上半身だけ起して呆然と しているロイドを見つけた。



「・・・・コレット・・・・・・今、ここに誰か居なかったか?」
「え? 別に・・・・誰もいなかったけど?」



 どうしたの? と訊ねる彼女に、わからないと答える。
 わからない、本当にわからないのだが・・・・・



「今ここに、誰かいた気がするんだ・・・・・・」
「・・・・・・でも、誰もいなかったよ?」
「うんっ・・・・・」



 変なロイドと笑われて、本当にそんな気がしたのだと拗ねてみせる。
 けれど自分の中の疑問は拭えなくて、毛布をたたみながらもう一度後ろを振り返る。
 しかしそこには風が一陣通り過ぎただけで、求めた人影はどこにもなかった。



「・・・・・・・・・・・かな」
「え?」



 何か言った? と振り向くコレットに、ニッと笑って自慢げに話す。



「久しぶりに、父さんの夢を見たからかなっ」
「お父さん?」
「んっ・・・・・」



 どんな夢なのと問われて、ロイドはいつもより少しだけ穏やかな顔になった。



「あんまりよく覚えては居ないんだけど、俺が眠っているところに父さんがやってきて、 俺の布団を剥がしちまうんだ」
「うんうんっ」
「それで起きろって言って俺を抱き上げて、お母さんが待ってるぞって、もうお腹が へっただろうって言って・・・・・・俺の髪を梳いてくれるんだ・・・・・・」

「・・・・いいね」

「うん・・・・・・うんとちっちゃい頃で、父さんの事なんて本当は全然覚えてないのかもしれ ないんだけどさ・・・・・・」





 その手の感触だけは
 決して忘れられないのだと

 自分の中の父親の記憶なのだと

 確信したようにロイドは笑った





「いつかっ、会えるといいねお父さんにっ!」
「・・・・・あぁっ」




 遠く離れたところで
 一人の男性がその姿を見守っていることを


 彼はまだ気付けない




 それは繋がりきらない

 シナプスへの焦動



END















すみません、すみません、すみません、すみません・・・(エンドレス)
私はまた禁域に手を出してしまいました? ってかこれもう・・・・イメージぶち壊したらごめんなさい。
クラさんの親ばか具合が好きですよ、「・・・・・フっ」 に籠められた愛情がたまらないですよ!
ストーカーのように出没しようが、お子様料理ばかり上手な上にトマト駄目だろうがいい親父じゃないですか!!
愛されているっていうのは、人が生きていくためのすごく大切な根底概念だと思います。
離れていた分を埋め補う様に、クラトスさんは今ロイドに注いでいるんですね。
親としてこれ以上大事なことって無いと思います。
愛情の形を見失いがちな今ですから、それを思い出させてくれるって、いいゲームだなぁ・・・・テイルズ。

そしてのりまき先生・・・・・・等価交換です(笑   オジョー下さい(笑

2003.12.7         黛 誓





いやいや…まじでありがとう!まゆまゆ〜!
なんかやっぱり家族っていいよね。
愛をたっぷりと感じたよ。あったか家族でお腹いっぱいでした(悦)
本当、まゆまゆの小説は、ホッとしますvv

おだじょさんですかー、また資料のある時に
描かせていただきます、ふふ(笑)

03.12.15  山本 のりまき